Time Has Come
 
 
 
『弟』

 先日、机の前に座ってぼんやりしていると、天井から何かが落ちてきた。
 それは僕の頭に当たって、机の上に転がった。
 何気なくそれを手に取ってみると、小さなネジだった。
 それは不思議なネジで、頭の溝にびっしりと歯が生えていた。
 おかげで、ネジ回しは使えそうにない。
 一体何の為に造られたものなのだろう?
 そんな事を考えていると、突然ネジが喋りだした。
「お兄さん、お兄さん……僕ですよ。あなたの弟ですよ」
 不意に見ず知らずのネジに兄呼ばわりされ、多少困惑するにはしたものの、言われてみれば自分には弟がいたようだった。
 それで暫くの間、とりとめのない事を話し合っていたのだが、そうすればいよいよ、このネジと僕は兄弟なんじゃないだろうかという思いは強くなる一方であった。
「ところで兄さん、僕は喉が乾いて仕方がないんだ。どうぞ、アイスクリームを御馳走してくれないかい?」
 だが間の悪い事に、この時、家にはアイスクリームは丁度一つしかなかった。いくら弟とはいえ、自分の楽しみを譲る気にはなれず、僕は断固としてその要求を退けた。
 するとネジは小声で、
「チェッ」
と言ったきり、何も喋らなくなった。
 以来、僕の机の引き出しには一本の小さなネジが仕舞われているが、この風変わりな弟はあれから一向口をきいてくれない。
 もしかすると死んだのかもしれない。