そしてゼミコンのー水曜日、僕は珍しく麻のジャケットと淡い色のシャツを着て、天王寺に出向いた。授業は昼間でだったので、一度家に戻ってから着替えたのだ。そうでもないと、この格好はとても大学にいく服装とは言えない。ちょっとよそ行きなのだ。
先生の「いい格好で着てね」というのは、どう解釈してよかったものか。まあ大学生の「いい格好」だから大したものではないが、それでもジーンズやTシャツのラフな格好を見なれている学生にすると、普段着とは見違えたようになる。僕も家を出る際、母親に「今日はどこにいくの」と好奇心まるだしの顔で聞かれた。ほっとけよ、もう二十歳もすぎた男なのにさ……とはいえデートの相手もいないんだが。
K…ビルの2階。時刻は5時55分。いい頃合だろう。
僕が『カイト』のドアを開けて入った途端、店内のライトが暖色のオレンジからゆっくりと深い青に変わっていった。ライトは一瞬で切り替わるのではなく、徐々に そう、例えるなら昼が夜に移り変わるように、ゆっくりと変化した。僕は少しの間何が起こったのかよくわからなかったが、この店が昼はレストランで夜はバーだということを思い出した。6時からバーになるということらしい。
……びっくりした。
「佳月君、佳月君でしょ」
突然声をかけられてびくっとすると、一人の女の子が右側のテーブルの向うから手を振っていた。
「こっちだよ、こっち。O…大学澁谷ゼミのコンパはこっちでーす」
僕は女の子の方に歩いていった。彼女は赤いチャイナドレスを着て、髪を結い上げ、そこに花飾りをつけていた。なかなか似合っていてかわいい。ここにくる道中、どこにいくのかと不思議がられたに違いない。いや、こんな格好で電車に乗るわけないか。店内のトイレで着替えたのかもしれない。
彼女は名簿らしき用紙を手にして、僕に言った。
「私、会費集める係やから、先に2千円くれるかな」
僕は彼女の名前を思い出そうとして、彼女がつけている名札に気づいた。コンパのためにわざわざつくったらしい。名札は『清水』。そうだ、清水さんだ。
「清水さん、今どれぐらい揃ってる?」
彼女は顔をあげて、にっこりした。
「私の名前、覚えてくれてたん? ……って、名札見たんやろ」
ぎくっ。
「いや、そんなことないって。で、まさか俺が最後?」
「ううん、まだあと7人ほどきてないわ」
僕は財布から2千円出して彼女に渡した。彼女はそれを封筒にしまい、名簿にチェックした。
「じゃ確かにもらったわ。きている人は、そこの個室にいるからさ、入っててよ。中のテーブルの上に、名札の入った箱があるから、自分の名前の名札つけといて」
清水さんは個室の外で他の人を待つらしい。
「じゃあ、後で」
僕はその場を離れ、個室のドアをあけた。中は思ったより明るく、広かった。大きなテーブルが二つ、椅子が二十ほど、そして席は半分ほど埋まっていた。テーブルの上には大皿に盛られた料理が何品が並べられていたが、僕の後から大きな皿を手にした店員が二人続いてきたので、まだ料理は出るらしい。これで飲み放題で二千円とは安すぎる。ビールの入ったピッチャーが3つ、テーブルの上にどんとおかれている。たぶんこれで乾杯するんだろう。
僕はテーブルの上の箱から、自分の名前の名札をさがした。ワープロらしい字で、『佳月』と名字だけうってある。
「あら、佳月君だったわね?」
部屋の隅の方で女の子と談笑していた澁谷先生が声をかけてきた。
今日の澁谷先生は、黒い透けるような素材の上着をきて、下にラメの入ったキャミソールを着ていた。端整な顔にはいつもの謎めいた微笑が浮かでいる。O…大学のモナリザという呼び名もあるが(モナリザは別に美女ではないが)、二十才そこそこの学生に囲まれていても決して異質感がないのは、どことなく仕草にかわいらしさが覗くせいだろうか。
「こんばんは、先生」
と僕は挨拶してから、適当な椅子に座ろうと辺りを見まわした。
「よう、こっち来るか?」
と声をかけられて振り向くと、呼んでいたのは、僕がさっき部屋に入ってきたとき、女の子3人ほどを相手に楽しそうに話していた男だった。僕は徳田がまだきていなかったので、それまで彼の隣にいようとすすめられた椅子に座った。
しかし、本当は彼の隣には座りたくなかった。彼の名前は、確か前倉。今日の前倉は何を考えているのかスーツを着込んで、髪をオールバック風にかきあげるといういでたちだった。その様はさわやかなスーツの青年ではなくまるでホストのように見えた。大学入学当時から女の子に声をかけまくり、同じ学科の女の子の携帯電話番号を全部知っていると豪語するような奴だから、このコンパで誰かをひっかけようという魂胆に違いない。
「お前、なんやったっけ……そう、佳月か」
あんまり親しくもない奴に「お前」と呼ばれたくないんだがなぁ。
僕は黙って、ジャケットに名札をつけた。
「前に思ってききたかったんやけどな、なんでお前、標準語なん?」
ほっとけよ、そんなこと。
僕が黙っていると、ドアが開いて清水さんを先頭に5人ほど入ってきた。
「お待たせしました―。まだこない人は放っておいて、先に始めましょ」
遅れてやってきた人達が近くの席につく。僕は改めてゼミのメンバーを見まわした。この場にいるのは……先生を含め十五名。女の子は丁寧に化粧して、ショールをまとっていたり、仕立てのいいワンピースだったりしてなかなか華やかだ。チャイナドレスは清水さんの他に二人いた。友達同士のようで、示し合わせてこの格好にしたらしい。男のほうは……と言えば、ジージャンだったりしゃれたシャツと高そうな生地のスラックスだったり、そんなに「いい格好」ではないが「格好いい」ように装っていた。一人だけ違うのは前倉、こいつだけだ。僕は徳田がきたのでそちらにいきたかったが、進行役らしい清水さんが立ってなにか話し出そうとしていたので、動こうに動けなかった。
「まずはビールで乾杯といきましょー。皆グラス持ってくださーい」
手から手へとビールのグラスが配られ、全員がグラスを手にしたところで、澁谷先生が立ち上がる。
「美人だよな、先生」
先生が乾杯に至るまでの前置きを話している時、前倉がぼそっと言った。
「なんだ、君は先生目当てじゃないのか」
僕が皮肉のつもりで言うと、前倉は首を振った。
「俺はな、バイクをテーマに卒論を書きたいから、澁谷先生を選択したんだ」
確かに、他の先生ではそのテーマは無理だろう。文芸学科のゼミは、古文やシナリオといったテーマのゼミがほとんどなのだ。
「……そういうわけで、これからよろしくお願いします」
先生が右手を掲げた。全員が同じポーズを取る。
「乾杯!」
グラスの触れ合う音があちこちで響く。したくはなかったが、僕は前倉と乾杯した。
「おい、佳月」
徳田が近くの席から呼んでいたので、僕はグラスを持ってとっとと移動した。
「お前、前倉とダチだったのか」
「まさか」
徳田がそう言ってきたので、僕は即座に返した。
今日の徳田は僕と同じようにジャケットを羽織っている。淡い色のジャケットで、これまた僕と同じく麻らしい。僕と違うのは彼はネクタイをしていることだ。そこが彼なりのお洒落なのだろう。
僕が料理を皿に取っている間に、徳田はグラスのビールをあけてしまうと、すぐさまピッチャーのビールを注ぎ足した。あんまりこいつに飲ませたくはないんだが。
「佳月君、飲めへんの?」
顔を上げると、清水さんがグラスを手にやってくるところだった。僕のグラスのビールがほとんど減っていないのを見たらしい。
「俺、酒だめだから」
僕が笑って言うと、隣で徳田が僕を箸でさして言った。
「こいつ酔うとやばいよ。酒乱だから、襲われるって」
僕は徳田の頭をこづいてやった。酒乱はお前だっつーの。
「えー、ほんとにぃ?」
清水さんは笑った。
「飲み放題やから、なんでも頼んでいいよ。ソフトドリンクもあるし」
清水さんの持っているグラスはビールでなくチューハイが入っているらしい。すでにビールを飲みきったということだ。女の子でも飲む人は飲むらしい。彼女は僕と徳田から離れると、違うグループのところへ行ってまた声をかけていた。
「そういや清水って、男に人気があるらしいな」
徳田が言った。
「さっぱりした性格で、あの顔だろ。今のとこ学科で三人は彼女に振られたそうだ」
あまり女に興味のない徳田が、そんな話をするのは珍しい。
まあ確かに、清水さんは澁谷先生とまたタイプの違う美人といえる。
「へえ、そうなんだ。俺はゼミで初めて彼女を知ったよ」
「そりゃゲームおたくのお前に、そういう話する奴いないよ」
…………ムッ。
「トランペットフェチに言われたくないよ」
徳田は文芸学科には珍しく楽器を演奏するのが好きで、吹奏楽のサークルに入っている。なによりトランペットを愛していると自称する奴だ。
「お前、トランペットを馬鹿にするのか」
徳田は足元に置いていたらしい鞄を取り上げた。ぽん、とその側面をたたく。
「こいつはなあ、どんな女でも出せない甘美な声と、きらめくボディを持ってるんだ。そこらの女と一緒にしないでくれ」
……いつも持ち歩いているのかよ、トランペット。きらめくボディって、そりゃ光っているだろうよ。金属だし。
僕は辺りを見回した。一応全体的に盛り上がってはいるが、よく見るといくつかのグループに分かれているのがわかった。一応二年同じ学科にいたから、大抵の奴の顔は知っているが、授業がほとんど重ならないのか、初めて見るような顔もたまにいる。
コンパというより、飲み食いにきたって感じだな、俺は。徳田もだけど。
離れたところにいる前倉が、隣に座っている女の子の椅子の背もたれを抱くようにして話しているのが見えた。かなり調子にのっているように見える。話しかける際にやたらと女の子に顔を近づけたりして、下心がみえみえなのだ。
やれやれ。
しばらくしてから席替えということで、清水さんがせわしなく皆の間を行き来しだした。
「ちょっと酔いがまわったあたりで、席替えしましょーう。私がクジをもってまわるので、皆ひいてくださーい。皆がひき終ってから、私が番号のカードを椅子に置くので、そこに座ってくださいねー」
清水さんが声をあげる。
僕は8番だった。徳田は14番。
「じゃあ元気でな」
と別れを告げ、僕は8番のカードを探した。予想もしない、澁谷先生の右隣だった。
「いらっしゃい、佳月君」
と澁谷先生はにっこりした。
「どうも」
僕は椅子に座った。持ってきたグラスが空だったので、ジュースでも飲もうとメニューを見ていると、先生が横から覗き込んできて言った。
「このワインおいしいわよ。飲んでみない? このお店のシェフのオススメ」
「俺酒は飲めないんですよ」
僕は断った。先生は笑みを口元に浮かべた。
「ほんとに? 信じられない。弱いってこと?」
「前後不覚に陥って、気づいたら知らないところで起きてたりするんです」
もちろん冗談だった。それに近いことはあったが。
「酔わせてみたいわ」
先生が言うと、ちょうど後ろを通りかかって話をききつけたらしい清水さんが口を挟んだ。
「そんなこと言うて、先生、佳月君がほんとに意識失ったら怖いじゃないですか。店にだってサービスしてもらってるのに、迷惑かけてしまいますよ」
「あら、この店のオーナー、私の知り合いなのよ」
清水さんの咎めるような口調に、先生はしゃらっと言った。
知り合いだから、このサービスか。よほど親しいみたいだ。
「いくら知り合いでも、そんなことになったら」
「あら、でも、その時は私が責任もって佳月君を送り届けるから、心配しなくてもいいわよ。なんなら私の家に泊まってもらってもいいし」
そんな挑発的なことを口にしているものの、この笑い方からしてまったくの冗談だな。怖い先生だ。
「美也子、デザート来たからおいでよー」
清水さんの友達らしい女の子が隣のテーブルの方から呼んだ。
「あら、お友達が呼んでるわよ、清水さん」
先生がそう言うと、清水さんは先生の方に向き直った。その時の目つきは、なにやら剣呑なものを含んでいた。が、次の瞬間にはその暗い影は消え、
「じゃ、佳月君。飲みすぎないようにね」
と言い残して、清水さんは行ってしまった。
……。
先生がくすくすと笑いだした。
「何がおかしいんですか?」
僕がきくと、先生は笑いを含んだ笑みを浮かべ、僕を見た。
「ううん、面白いな、と思って」
「は?」
先生は深い赤のマネキュアが塗られた指で、そっとグラスを撫でていた。それはどことなく愛おしさのこもった仕草だった。
僕は目をそらし、近くに座っている人を眺めた。こちらのテーブルには女の子が固まっているように見える。徳田や前倉を始め、男の大半は隣のテーブルの方にいる。前倉が清水さんをつかまえてなにか話していた。まったく、誰でもいいみたいだな、前倉は。清水さんは気乗りしなさそうな顔で相槌をうっているようだった。
澁谷先生が他の子と話し出したので、僕は一人ジュースを飲んでいた。
ふっと視線をさまよわせていると、向かい側の席の女の子と目が合った。女の子はすぐに視線をそらしたが、僕はなんとなく名札まで見てしまった。
『宮下』。うーむ、覚えがあるようなないような。どこかで見たことのある気がしないでもない……。
「佳月君、君も飲みなよ」
と名前もよく知らない女の子にピッチャーのビールをすすめられる。清水さんの友人らしく、チャイナドレスを身につけていた。
「いや、俺はいいよ。君こそ飲んだら」
僕は逆にその子のグラスにビールを注いでやった。
「佳月君て、去年の『文学工房』に短編のせた人やろ?」
昔の話を持ち出されて、僕は思わず飲んでいたジュースを吹き出しかけた。『文学工房』とは大学が編集・発行している、文芸学科の生徒が自分の作品を投稿する雑誌の名前だ。のったからどうというわけでもないが、半年に一度の発行に多くの作品が投稿されるので、僕はまさか自分の作品が掲載されるとは少しも考えていなかったのだが……。
「よ、よく知ってるね」
「え、一部では有名やねんで。知らんかった?」
僕は「瀬戸」という名札をつけた女の子をまじまじと見つめた。
「……有名?」
彼女は口にしたから揚げを飲みこんでから、僕に答えてくれる。
「そーやで。めっちゃフェミニストな話やったから、佳月君てどんな人やろ、って一時期話題の人やったよ」
……そんなにフェミニストな話だったか?
僕は自分の作品を思い返そうとして、やめた。恥ずかしすぎる。
「卒論も恋愛小説でいくん?」
瀬戸さんの問いに、僕はどう答えたものか悩んだ。
まだ決まっていないのだ、はっきり言うと。
大学で身につけた知識の結集とも言える作品をかきたい……っていうのが希望なんだが。
と、瀬戸さんに告げると、彼女はころころと笑った。
「そんなん、誰でもそう思っとるわ。卒論ってそういうもんやし」
……まぁそうだよな。
コンパは8時で終わった。僕は結局最初のビールしかアルコールを口にしていなかったが、徳田の方はかなり飲んだらしく、顔には出ていないもの足取りが怪しかった。
「じゃ、お疲れ様でーす」
後は適当にカラオケやらボーリングに行く話が出ているらしく、K…ビルの下でゼミのメンバーは帰る様子もなく盛り上がっていた。
「結局、全然飲まなかったわね」
と澁谷先生が僕に声をかけたので、僕は軽い冗談を口にした。
「先生の家に泊まれなくて残念です」
「あら、本気にしてた? ごめんなさい、今日は部屋が散らかっているから無理だったわ」
冗談なのか本気なのかわからないセリフでごまかされた。
「先生カラオケ行かないんですか?」
女の子が先生に言った。
「先生めっちゃ歌うまいってききましたよ。洋楽も歌えるんでしょ?」
そういや先生は4カ国語をマスターしていると高崎に聞いたことがある。
「やめておくわ、明日も早いし。皆もほどほどにね」
と先生は華やかな笑顔を見せて駅のほうに歩いていった。
「佳月君は、カラオケ行けへんの?」
と清水さんがやってきた。僕は首を振る。
「いいや、やめとくよ。俺音痴だから」
「きいていると気が狂うよ」
と茶々を入れる徳田の頭をこづく。俺の歌う洋楽をお前が知らないだけだろう。
「そうなん? 残念やな」
「いいやんか、こない奴はほっとけば」
前倉がやってきて、清水さんの服を引っ張った。
「もう皆移動しとるし、いこうや」
清水さんは一度だけ振り返ったが、前倉に連れられてカラオケ組のところへ戻っていった。
「前倉は清水狙いか。無理だと思うけどな」
徳田がつぶやく。
「もういいよ、それよりお前、ちゃんと帰れるのかよ。なんだったら高崎の家に行くとか」
「なんだよ、俺の心配してくれてるのか」
僕が駅の方へ歩き出すと、徳田はトランペットの入った鞄を大事そうに抱えてついてきた。
「電車乗り過ごしたり、奈良で降りれてもそこから家に辿りつけるのかわからんからな、お前は」
あれは僕がまだ一回生の時、夜バイトから帰ると、母親が「徳田君から電話があった」と告げた。しかし僕が彼のポケベルに連絡しても電話はなく、彼の家に電話しても彼は不在だった。「何か酔ってたみたいだけど」と母親が言うので、僕はその日徳田がサークルのコンパに参加しているのを思い出して、次の日大学にいって徳田に何の用だったのかときくことにした。大学にいった僕が知ったのは、昨夜僕が徳田に連絡をとろうとしていた時、ヤツは飲みすぎて意識を失い、サークルの仲間に介抱されていたらしいということだった。どういうわけか徳田には、僕に電話したことすら記憶にないという。しかしサークルの仲間がひっくり返った彼を助け起こそうとした時、徳田は「佳月に電話しなければならないんだ……」とアドレス帳を手に繰り返したそうだ。そのまま彼が急性アル中で死んででもいたら、僕はずっと「徳田は僕に何を言いたかったんだ……」と悩むことになったかもしれない。幸いそのようなことにはならなかったが、これからそうならないと言えない保証はどこにもないのだ。
「佳月……俺は嬉しいよ。この友情に俺は報いることができるのか……」
後ろの徳田が涙声で言い出すので、僕はなんかおかしくて笑いながら振り返った。
「別にそんなの気にするなよ……って、おい、何してんだ!」
「俺にできるのはこれぐらいだー」
僕が振り返った時には、徳田は鞄からトランペットを取り出し、今にも吹き出そうとしていた。周囲の人が路上パフォーマンスと勘違いしたのか徳田の方を見て立ち止まっていた。
「やめてくれ、こんなところで。駅前だぞ」
「止めてくれるな。俺にできるのはこんなことだけだ。遠慮しないでくれ」
僕はなんとか徳田をなだめすかして、JR天王寺駅まで引っ張っていって大和路快速に乗りこませた。意識はちゃんとしてるから、どうにか帰りつけるだろう。
やれやれ、と時計を見ると、9時前だった。家に帰っても10時ぐらいか。まだのんびりしたものだ。
僕はゲーセンに行くことにした。徳田におたく呼ばわりされようとも、ゲーセン通いは止められないのだ。奴に酒が止められないのと同じように。